きっかけは些細なことから―。
「あら?その髪型、どこの美容院?」
岡野の母親は、東京の荻窪で営まれているワンネスに足を運んでいた。
荻窪は杉並区にある街だ。吉祥寺に隣接し、サロンの激戦区として知られている。
息子のサロンだし、しばらくは子孝行してやるか。理由はそれだけだった。
それが地元の茨城県鹿嶋市に帰ると、すこぶる評判がいい。
あまりに通っている美容室を聞かれるようになったため、息子ながらに驚いた。
親バカだと思われるを避けるため、よほど親しい知り合いでない限り、「東京の美容室に通っているのよ~」とだけ、母親は答えていたそう笑。
「そんなに上手な美容師さんなんだったら、私も東京へ通おうかしら。」
そう言ったのは、一人や二人ではなかった。
母親から地元の状況(評判)を聞いた岡野。「ある想い」が芽生えた。
自分を必要としてくれる人がいるんだったら、美容師冥利に尽きるよな…。
母親もいずれ高齢になるんだし、自分が地元に帰ってカットしてあげたいな…。
東京では、プレイングオーナーとして、忙しい日々を送っていた岡野。日々のサロンワークの中に、「空き時間」を作る余裕などない。
「…休暇日を、地元のサロンワークに充てることはできないだろうか?」こうして岡野は、火曜日に絞り、地元で活動する方法を模索し始める。
まずはセット面を貸してくれる美容室を探そう-。
「ボランティアなら、それこそ自宅でも良かったのかもしれませんが、
僕の価値を理解してくださったうえで、自分に切ってほしい…。
そう思ってくださる方に通って頂ければ…そのように考えていました。」
すでに岡野の地元でのサロンワーク開始を、待っている客はいるのだ。
早く自分の腕を揮える場所を決めたかったが、これが意外に難しかった。
東京とは違い、地方では、まだまだ面貸しに積極的な美容院は少なかった。
お店の雰囲気が崩れるかもしれないから…。お客様が流出するかもしれないから…。
岡野の想いとは裏腹に、知り合いを通じた交渉すら、2度も失敗した。
3度目の正直。次がダメなら、別の方法も考えないと…。
そんな思いも、頭をよぎり始めた。
3人目にお願いした女性オーナーは、まったく面識もなかったため、了承してもらえる可能性は低いだろう…と、踏んでいた。
しかし、至極スムーズに「構いませんよ?」と、返事をもらえたのだ。じつはこの女性オーナー、東日本大震災で大変な思いをした一人だった。
お店の水道や電気などのライフラインが止まってしまい、そこにお客様がいるのに、キレイにしてあげることができない。オーナーは震災の経験者だったのだ。
「自分を必要としてくださるお客様が、この神栖市にもいるから」。
休暇を削ってまで、東京からサロンワークをしに来たいと訴える岡野。
状況の違いはあれど、岡野の熱意に心を打たれたとしても不思議ではない。
岡野自身も気を遣って、「オーナーのサロンが休日の日に」と、条件をつけた。
こうして、東京(ワンネス)が休日の日に充てた「地元サロンワーク」を始める。
一過性ではなく、想いを継続させる―。
神栖市のカット単価は、おそらく4000円前後だろう。対して岡野のカットは5000円。
しかし彼は東京でも予約が難しい、人気のスタイリストなのだ。価値はお客様自身が決めればいい。
「一番大変なのは、やっぱり身体です。電車とバスを乗り継いで、片道2時間30分。
火曜日に神栖市でサロンワークを終えて、水曜日の朝早くから、東京へ帰ることも多いですけど…。
そのまま自分のお店(ワンネス)に直行してサロンワークですから、楽ではありませんよね笑。」
エピローグ
岡野が東京と地元で、サロンワークを両立させるようになって、もうすぐ4年目になる。
東京のサロン名であるONENESSは「ひとつでありたい」という思いから。一期一会の心を大切にしている岡野らしいネーミングである。
「ムリにお客様を増やそうとせず、自分を必要としてくださる方に最上のスタイルを。それが、僕の目指す理想のスタイリストなんです。」
神栖市にお住まいの方が読まれたのあれば、一度岡野に会いに行ってはどうだろう。
岡野の創造する最上のスタイルを知ることで、好きになる。そんな人たちは、まだまだ神栖市に多く眠っていると思うからだ。
interview by wish
岡野 ワークサロン
MAHALO マハロ
所在地 | 茨城県神栖市堀割3-8-27 |
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マハロTEL | 0299-93-1589 |
岡野予約TEL | 岡野の予約はワンネスへお電話ください。 03-3392-6980 |
岡野営業日 | 毎月第3火曜日 (完全予約制) |
岡野 施術メニュー
カット | ¥5,000 |
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カット・カラー | ¥10,000~ |
カット・パーマ | ¥10,000~ |